冬の朝
花形新次

早朝駅に向かう下り坂で
後ろから女性の悲鳴が聞こえたので
振り返ると
小学生の男のガキが
老婆のバッグをひったくって
逃げて行くところだった
その時私の頭に浮かんだのは
「今、このクソガキを捕まえて
半殺しの目に合わせても
許されるよな」ということだった
顔面半分潰れるぐらいは有りだよな
そう思うと俄然やる気になって
ばばあそっちのけで
ガキを捕まえるために全力疾走したが
騒ぎを聞き付けた人たちが集まって来て
ガキの行く手を阻んだため
ガキは逃げるのを諦めてアッサリ捕まってしまった
押し出しのきいた若いサラリーマンが
警察に引き渡すまでガキの腕を掴み離さなかった
あ~あ、私のこの煮えたぎるように熱い思いは
一体何処に行けば良いのだろうか?
いっそのこと
被害者のばばあに
「ばばあが朝っぱらから
一人で歩いてるからそんな目に会うんだよ!」と
文句を言ってやろうかとも思ったが
止めた


自由詩 冬の朝 Copyright 花形新次 2020-12-17 22:17:43
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