貝殻の中の海
道草次郎
ホメロスでさえ
ホメロスでない者に倣ったろう
ホメロスでない者も
祈祷と計量と記録のなかからミューズを連れてきただろう
最初、必要のなかから詩をほりだし、
それが貝殻の中の海だと知った時、はじめて、人は、詩人となった
ものは、みな、歌っていただろう
光や、星や、夜風の絡む杉の木でさえも
生き延びるだけでは、何か、足りなかったのだろう
なぜなら死者たちは、居続けたから
100の惑星に知性体がいるだろう
100の人は詩人となるだろう
かれらは聴くだろう
光や、星や、夜風の絡む風土に適応した奇妙な生態系の歌を
天の川銀河だけでも
無数のホメロスと、数多のラスコーの壁画と、ピラミッドとピラミッドに必要な祈祷と計量と記録があるだろう
詩は貝殻の中の海
貝殻も
海も
この宇宙にはふんだんにあるのだから