可能なら雨上がりの空には理想的な美しい虹がかかって欲しい
こたきひろし

じっとしてたらこの体もこころも氷結されて凍りの柱にされそうな
冷たい雨が降ってやがる
よりによって嫌いな蟷螂がどっかから飛んで来て俺の華奢な肩にとまったじゃないかよ
俺は咄嗟にそれを濡れた軍手で払いのけた

季節は冬か春か夏か秋か
覚えてねぇよ
果たしてそこが極楽浄土か地獄の底か
それさえ記憶に残ってねぇよ

ただただ寒いんだよ
寒かったんだよ
おまけにそれを煽りたてるみたいに
冷たい雨が降ってやがった

そしたらずぶ濡れの女が歩いて俺の方に近づいてくるのよ
だんだんその姿格好が見えてきたら
これがすこぶるいいおんななのよ
それが寒い雨ん中なぜか薄着でさ
裸身が透けて見えてたのよ

こっちはまだまだ血気さかんで動物本能満載よ
いいおんなのそんな姿見せつけられたら
落ちついていられる訳ねぇよ

寒さなんかいっぺんに吹っ飛んでさ
訳がありそなそんな弱みにつけ込んだら何とかいけそな気がしてさ
男だったら誰だってそう思うだろうよ
思わない奴いたらそいつは役にたたなくなってるだろう
それともおんなには用なしなのかも知れないのだ

それはそれで何の偏見も差別意識も持ってはいないけどさ
俺はたまたまそうじゃないから体の血液熱くなって沸騰寸前になっちまった

不思議なもんだよ
おんなも初対面の俺にその気で近づいてきたんだよな
その場で直ぐにまぐわい始まった訳さ

お互い冷たい体をくっつけあってさ
燃え上がったのに
事が終わると
それから夢にも思わなかった事態になっちまった
おんなの可愛かった唇からよ
先の鋭く尖った牙があらわれたかと思ったら
俺の事頭から食べだしたのよ

それはまるで雌蟷螂が雄と交わってその後に雄を食べてしまう
習性と一緒だったな

意識はそこから先無しよ


自由詩 可能なら雨上がりの空には理想的な美しい虹がかかって欲しい Copyright こたきひろし 2020-12-13 09:16:46
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