冬猫
そらの珊瑚

雨戸を閉めようとすると
足音もなく猫がやってきて
そのレールの上に座る
木製のレールは
約束されていたようにすでにささくれだっていて
座り心地はおせじにもいいとはいえなかったろうに
猫は
殺風景でさみしげな庭を見ていた
もうすぐ夜におかされていく庭の顛末を

祖母と雨戸は
猫の気のすむまで待ち続けた
唯、時計の針だけは待たなかった

猫は名前を持っていなかった
命の他にはきっとなんにも

冬生まれの猫だから
きょうだいはみな大人になれずに死んでしまった

この世の猫の生き残り



自由詩 冬猫 Copyright そらの珊瑚 2020-12-12 21:55:15
notebook Home 戻る