俺の体の毛細血管もそれ以外の血管も
こたきひろし
足の指先 手の指先 脳みそのなかまでも
俺の体内を駆け巡るすべての血管が
もし止まってしまったら
俺は間違いなく粉々になるって
表現おかしいかも知れないが
生きているって
簡単な仕掛けなんだよな
死ぬって命のゼンマイが切れてしまう事なんだよな
二度と修復できないから
生きている重さと深さと有り難さをしみじみ感じるんだろうな
それにしても
この世界が終わっちまう前に
俺の世界が終わってしまうなんて
どうしても納得いかない
この地球が一瞬にこの宇宙から消えてなくなるから
そのとき俺も一緒に木っ端微塵になれるなら
幸せだなんて
未熟な若い頃は本気で願ってしまった
だけどね
今は違うんだよ
家族を持ってしまったから
絶対失いたくないかけがいのない
家族持ってしまったから
家族にはこの世界に生き残って欲しいんだよ
俺は順番に従って
先に 先にいくけどさ
婆ちゃん
父ちゃん
母ちゃん
三つ上の姉ちゃん
四つ上の姉ちゃん
俺より先にいっちまったけれど
俺をそっちに呼ぶなよな
こっちに残ってる一番上の姉ちゃんと兄ちゃんも
呼ぶなよな
俺は呼ばれたって気安く返事たってしないぞ
生きてやるからな
死ぬまで
生きてやるからな