夜顔
メープルコート



 群青色の波間に漂ううっすらとした顔の群れ。
 優しさを纏ったその顔は私の回想。
 過去を封じ込める事に失敗した私の想い。
 ただ一つ誇れるのは私はまだ死んではいないという事実のみ。

 都会の海に反射する雑踏の明かり。
 高速道路から見える工場の群れ。
 精神の闇を誰も気付かない。
 ただ一つはっきりしているのは誰のせいでもないという事実のみ。

 煙草を吹かすと都会の嫌みが消えてゆく。
 珈琲の藍色が空の色に同化する。
 寂しさは目の下の痙攣。

 群青色の海からすでに消えた顔の群れ。
 すべて果たされたのだろうか。
 天の星達が月に寄り添い都会の風に揺れている。
 


自由詩 夜顔 Copyright メープルコート 2020-12-12 02:11:49
notebook Home 戻る