夕の幻聴
ひだかたけし
夕暮れが来て
昼間高曇りの空の下
白っぽかった街並みが
闇に呑まれて行き出すと
高く豆腐売りのラッパの音、
響いて意識は遥か彼方に
散逸しながら
飛んでいく
遠い過去と遠い未来、
今此処で円環し
互いが互いを呼び合って
記憶の底打ち予感を掴み
夕暮れ色に染まっていく
(波打ち際で躍る砂、
青い青い水平線、
いずれも時の荒波に
揉まれて呑まれ
呑み返し)
夕暮れが来て
昼間高曇りの空の下
白っぽかった街並みが
闇に呑まれて行き出すと
高く豆腐売りのラッパの音、
響いて意識は遥か彼方に
散逸しながら
飛んでいく