つばめ
草野大悟2

朝もやのおもみで
水面までおわれた
口をなくしたカゲロウたちの叫びを
なきだしそうなそら見上げながら
すくい取っている。
かたわらに ひとり
片足で立つ刻の守人は、
つばめよ、
今、あなたの目にどのように映るのだろうか。

たおやかに、ときに、きぜわしく
大空をうつろう風が
いつのまにかおとなの顔をして
目をそらしながら吹きすぎる。

朝もやも川もカゲロウも 守人も空も
ため息ではない あきらめでもない静けさを吐きながら、幻の光をもとめて老いてゆく。
……「遊びたいのかな、とおもって」…

   ひとのきもちばかりを気にかけて、
    いつだって。

……「海を見たいのかな、とおもって」…   
   蟻地獄の毎日が産む狂おしさか、
   気まぐれなひとのきもちの重さか、
   それとも
   消えていく自分への恐怖か、
   ときおり、暴風雨となって荒れ狂う、
   いとおしさ。
        
夏祭りでにぎわうふる里と
よみのくにとを
とわにいきかう
菜の花のにおいの
あなた、
つばめよ。 


自由詩 つばめ Copyright 草野大悟2 2020-12-03 08:14:52
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