冷夜
ひだかたけし

ちりちりと
肌刺す冷気に
包まれて
詩を書く、詩を打つ
この夜陰
街には霧雨
降り続け
終わることない
哀しみが
記憶の糸を
濡らしてゆく

(糸はすぐに冷え切って
逗留すべき過去すら失い)

詩を書く、詩を打つ
この夜陰
濡れた記憶の右腕は
行き場を失い
力尽き
触れる薬指の
アトランダムな打刻だけ
冷える小部屋に
響いている










自由詩 冷夜 Copyright ひだかたけし 2020-12-01 19:57:15
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