返り討ちに合った復讐者
ただのみきや
うつけもの
わたしの頭は憂鬱の重石
悩みの古漬けぎっしりと
しゃくりあげて
願いは鳴いた
言葉を知らない鈴のように
子の骨を咥え 風の狐が走る
芝草を一斉に可愛がりながら
*
毒に酔って色を汚し
花弁も裂け八重に乱れて
満たない端数の気持ち
知らない無数の願い
掌と目合って苦い蜜
太陽が目を細める頃に
*
水彩の灰
つぶらな鳥の眼の
奥の奥に広がった
青い空と
あの雲の向こうは
同じだろうか
なんど確かめ
慰められても
見通せないその先を
石の顔で堪えている
わななく心臓へ
一粒の冷たい雨
*
蒼白いゆめのはなびら雨にぬれ
石の上 におうように張り付いた
文字なら滲んでしまうでしょう
舌から上る煙なら
すっかり透けもするでしょう
あるがままにこぼれて落ちて
あわいあわいに豊満な 窒息
こころを捕まえて
こころを捕まえてください
朝露に濡れそぼつ痛々しい無邪気さで
内側に棘を育てる蕾のように
誰にも知られず苛まれ
硝子のように取り返しのつかない
美しい沈黙をまき散らした
あのこころを
油を塗った毬のように優しい手つきを逃れ
飼い馴らされず野性にもなれず
今もパズルのように
抉り合う形のままの
こころを捕まえてください
遠くへ渡って往く日まで
この血で養いたいのです
ぎゃあと鳴く
切望と失望のめくるめく
霧の朝
蝶葬にされた死体から
酸い果実が唖の脚を伸ばす
わたくし鴉には
余白がない
想いも願いも
返り血で汚れ
光の無関心へ
恨み言が刃こぼれする
測量師
幸福は泣き腫らした目
悲しみは削ぎ落とされた微笑み
あなたの頬 遠く
経緯儀を覗くよう
《2020年11月25日》