嬋花
あらい


炎天下の発情。
 痘漿の裂傷、
 打ち据えた鈍らの刄溢れ
 貪欲な腹を割って、離す
 
聴き入れられない数万の蛍
ちかぢか 燃ゆる

 砂糖腐菓子が水辺で憂いて
  そのうち融けている
プリズムに凝固する
 「生まれ変わりを知ってるよ」
   きみがいうのだろうから
 口ずさんだは死に損ない、
  それは風前の虫の息 かつての燈籠の炎も
消え失せる刹那。
 不死鳥が羽ばたいただけの
 (延命治療といって)
 
 木の齢 好い質した痕
 あと いちまい、枯葉散らないまま
 あゝ 呑み下せば善かったのに、ね
 神の息吹とも 悪魔の囁きとも、
 準えるは 冬虫夏草の渇望


自由詩 嬋花 Copyright あらい 2020-11-21 22:13:10
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