風
武下愛
見えない手で触る事ができるのは子供だけじゃない。忘れなければ掴む事ができる。夢の先と同じ。叶ったら逃がさないのかも人それぞれ。痛みを忘れてしまっては生きていけない。隙間。瞬く。
一ページ毎に生きている言葉を見る。何時かまで潮騒が反響していく。覚えている事が少なすぎて、忘れた事が多すぎて、それでも呼吸をしている。
瞳を閉じて、窓の先にある、庭の花が揺れている。
音がする。
一重二重と揺れ動く残像のような妄想をそっと綴じた。
捲れてゆくページには誰かが居ます。相容れないと知っていても。居ます。