夜がすぐそこにきたから
こたきひろし

夜がすぐそこにきたから
寝床に入り眠ってしまう迄の間
肉の欲望と葛藤するのさ
まだ若かったから
すぐに負けたよ

酒は飲まない
煙草なんてもってのほかだ
賭け事なんか手を出したら
身の破滅だ

からしないよって、口にすると
決まって聞かれた
 それじゃこれか?
って小指立てられてさ

人に聞かれてその度に俺は辛くなった
女なんていないし
女なんて知らないし

恥ずかしながらいい歳してさ
女の前に立ったら緊張して
何も言えなくなっちまうんだ

性格暗いし
見た目にイケてないし
女から相手にされないのは無理ないけど

女ばっかりは諦めつかなかった
男の本能だからさ
本能には逆らえる訳ない

安いアパートで独居生活だったよ
いつも惨めな気持ちしていた

仕事に疲れてアパートに帰ると
すぐそこに夜がやってくる

万年床に入ると
いつも決まってうす汚いケモノになってしまったんだ

うす汚いケモノになってしまったんだ


自由詩 夜がすぐそこにきたから Copyright こたきひろし 2020-11-21 09:05:08
notebook Home 戻る