黒について
おろはげめがね

月が死ぬ

日暮れから宵に沈む僅かな間

やがて消えていく

虫たちの声を聴いて

夜で夜を愛し

黒で黒を染めて

綺麗な歯を晒した後の

肌を覆う闇に浸る

冷たく澄んだそれは

何匹かの獣を呼び覚まし

まどろみに落ちていく

激しい衝動と裏腹に

静かな歌は

ひとつ

ふたつと

刻を数える

風の匂いがして

樹々が騒ぎ

また再び夜は愛し合う

ひと時だけ生きとし生けるもの

のことを忘れて

虚空を指差して呟く

嗚呼、今夜もまた月が死ぬ


自由詩 黒について Copyright おろはげめがね 2020-11-20 21:06:17
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