夜のとばりが降りる頃
板谷みきょう

セクシーな超ミニのタイトスカート
小さめのハンドバッグ
エナメルの赤いハイヒール
ボディラインをのぞかせて
ボブヘアのケバイ女性に
すれ違いざま進路を塞がれた

「みきょうさん。
小林がいつもお世話になってますぅ💛」

覚えがない

何処かでお会いしましたか?
失礼ですがどちら様でしょう?

「小林の姉のヨシエですぅ💛」

じっくりと顔を見て


……
………驚いた

小林くん?

「いやだぁ💛
姉のヨシエですってぇ💛」

いやいや。
小林くんでしょ。
ど・どうしたの?
その恰好…

小林くんとは
一緒に銭湯にも
行ったりした仲だけど

「あたし、やっぱり
本当の姿で
生きて行こうって決めたの。
みきょうさんには
色々、困った時に
相談にも乗って貰って
お世話になってますぅ💛」

えーっ
全然気が付かなかった
知らなかったよ

それで今、何してるの?

「この近くのオカマバーに勤めてるの」

そ・それで
その胸はどうしたの?

「まだ、完全じゃないから入れてるの」

触ってもいい?

「いやだぁ💛
やっぱり男なのねぇ💛
…でも
特別よぉ💛」

ボクは
地下鉄24条駅前の路上で
人通りの多いことも忘れて
胸を触り揉ませて貰った

長い睫毛に赤い唇
綺麗に化粧して
本当に
小林くんだとは
思えなかった

作り物のおっぱいを
揉ませて貰いながら
これからは、誘われても
一緒に銭湯には行けないなぁ

そう思っていた


自由詩 夜のとばりが降りる頃 Copyright 板谷みきょう 2020-11-20 12:39:55
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