書きたくても書けない腐れ物書きのひとりごと。
月夜乃海花

最近、文章が書けません。

何かを書きたいのに心の臓あたりが形式化してくれないために、ただ悶々と溜まるばかりです。
詩人とは、心を削って生きていき、そして生きるのが下手どころの話ではないような人だと思ってました。
でも、実際は違って案外普通の人が案外さらっと賞を取っていくのです。
別にそれだからといってどうでもいいんですが。ファンがつくのは嬉しい限りですよ。それは。
賞を取って人に見られるほど自分へのイメージが固まって、自分の書きたいものが書けなくなることにどうしてみんな気づかないのでしょう。そもそも、皆さんの詩の書き方は半分正解で半分間違いだと思ってます。簡単に言うと正統派じゃ余程の才能がない限り無理と。

例えばですね。中原中也。有名ですね。
彼の詩のサーカスを最初読まされた時に正直、私は「こいつ、頭おかしいのか?」と思いました。
だって、ゆあーんゆよーんですよ。私の心がゆあゆよんですもの。なにそれ。

ですが、彼の経歴を見たらイメージが変わりました。中原中也は詩に対しての才能はあり、神童と呼ばれていました(この時点で大人のエゴが見えますね。普通になったら捨てるくせに。)。
しかし、その感受性の強さゆえに荒れていきました。知り合いのツテでNHKの入社試験に参加したものの「俺は詩しか書かねぇ」と断言し、そのまま不合格になりました。その後、なんやかんやで結婚し、子供が産まれます。長男の名前は文也。中也は自分の息子の文也を自分と重ね合わせているように可愛がっていました。
しかし、文也はわずか2歳で病死します。それ以降、作品の雰囲気も変わっていきました。
中原中也自体も幻聴や幼児退行がひどくなったため精神科に入院しました。最終的に結核性の脳膜炎で中也は亡くなり、それを追うように次男の愛雅が亡くなりました。

この事実を知った上で中也の詩を改めて紹介します。

また来ん春

また来ん春と人は云ふ
しかし私は辛いのだ
春が来たつて何になろ
あの子が返つて来るぢやない

おもへば今年の五月には
おまへを抱いて動物園
象を見せても猫(にやあ)といひ
鳥を見せても猫(にやあ)だつた

最後に見せた鹿だけは
角によつぽど惹かれてか
何とも云はず 眺めてた

ほんにおまへもあの時は
此の世の光のたゞ中に立つて眺めてゐたつけが……


生ひ立ちの歌

I
    幼年時
私の上に降る雪は
真綿まわたのやうでありました

    少年時
私の上に降る雪は
霙みぞれのやうでありました

    十七―十九
私の上に降る雪は
霰あられのやうに散りました

    二十―二十二
私の上に降る雪は
雹ひようであるかと思はれた

    二十三
私の上に降る雪は
ひどい吹雪とみえました

    二十四
私の上に降る雪は
いとしめやかになりました……

II

私の上に降る雪は
花びらのやうに降つてきます
薪たきぎの燃える音もして
凍るみ空の黝くろむ頃

私の上に降る雪は
いとなよびかになつかしく
手を差伸べて降りました

私の上に降る雪は
熱い額に落ちもくる
涙のやうでありました

私の上に降る雪に
いとねんごろに感謝して、神様に
長生したいと祈りました

私の上に降る雪は
いと貞潔でありました


いかがでしょう。ここまで説明したのは要は自分の生い立ちを、人生を人に知られてないと詩なんて書いても理解されないんだよ!っていうことです。今の詩は書けば勝手に読んだ人はここの部分はこういう意味で書いたのであろうという連想クイズになってます。私にはそれが好きになれないのです。それにここまで説明した中也だって、何を思って書いたかわからないし。
にも関わらず、文科省は「この詩の意味を考えてみましょう」などと訳の分からないことを仰ります。
何を言ってるんだお前は。日本語の勉強からやり直せ。

私はただ書きたいだけなのです。それだけです。
今は現代詩と呼ばれて形が自由になりましたね。そして、私の作品も形式が変わってる(無秩序)ものが多いです。同じだとつまらないじゃん。
私は人に評価されなくても書いていきます。応援してくださると嬉しいです。
でも、こうした方が良い、ああした方がいい
そういう忠告は嫌いです。
これらの作品は私であり、詩ではなく自分自身の鏡だから。
私というジャンルを生み出す。なんて簡単な作業なのでしょう。
ですので、詩の雑誌に応募してあーだこーだする気もないし。

私が死んだら、ネットの海から誰か引っこ抜いておいてください。
そしたら、理解されるかもしれないから。

作品が1番評価されるのは創り手が死んだ時だって知ってました?



散文(批評随筆小説等) 書きたくても書けない腐れ物書きのひとりごと。 Copyright 月夜乃海花 2020-11-19 09:08:10
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