お告げの鐘
服部 剛
久々に浅草の
老舗の喫茶店「アンジェラス」に行ったら
すでに閉店していた
「アンジェラスの鐘」は「お告げの鐘」
もう鳴らない、その鐘は
やがて記憶の風景に響くでしょう
昭和から平成へと渡る幾年の
無数の日々に訪れた
作家は思案に耽り、珈琲カップを傾け
友と友は語らい
恋人たちの手はそっと結び合う
レトロな三階建の
古時計の音が今も聴こえそうな
懐かしい空間よ
さようなら
時は常に流れ
あったものはすでになく
あの友の面影さえも、今はない
今宵は胸に懐かしい
異国の風景の塔の中
あの鐘は揺れている
さようなら、さようなら
の先に、新しい日は訪れ
あなたの思いを越えたある日
合図の鐘は、冬の澄んだ青空に響くでしょう
その日が早くても遅くてもいい
私は物語の合図を待ち
今日もそっと
目を閉じる