沈む寺
おろはげめがね

嗚呼これはあの日々の事だ

あの寒かった秋の海での出来事だ

曙光がその大理石の青白い肌を照らして

それは水の音 羽音 荘厳が立ち現れる気配

一切の神々は沈黙を遠のけておらず

物思いに耽るような

その旋律に浸るような

世界の黄昏をただ見守るような

そんな静寂の中で

赤い影を落として

夜が明けてからのしばらくの間

日が落ちるまでの束の間

うっとりとそれに私は見惚れる

降り注ぐ光は祝福に似た声

紺碧の海に呑まれる堅牢な純潔

永遠から解き放たれたとこしえの美

空は深く澄んで

風は呟くほどしかなく

僅かに輝く星々はどこまでも蒼い

聖者たちが集うこの異教の地で

それは再び音もなく沈んでいく


自由詩 沈む寺 Copyright おろはげめがね 2020-11-18 01:18:50
notebook Home