故郷
相田 九龍

久々に故郷に帰った
育った町は少しだけ表情を変えていて
寂れるどころか
新しい店も増えていた

実家の母は
やっぱり少しイカれていて
うまく説明できないけれど
やっぱり不快だった

待ち合わせ時間と場所を指定しておいて
なかなか駅に来ない
兄貴の新しい事業について耳を貸さない
部屋はやっぱり散らかっている
僕にはどうにもならないものが
ここには多過ぎる

少年でなくなるときの僕は
このどうしようもない気持ちを
詩に託していたんだろう
世界のニュースを見ながら
可哀想なのはやっぱり自分だと訴えたかった

この町から離れてよかったと思える場所が
生きるごとに増えるのは
不幸なことだろうか
たしかに幸せではないかもしれない

大切にしたいものは
一番はずっと自分だった
自分を大切にするために
選んだひとつひとつを不幸だとなじるな


自由詩 故郷 Copyright 相田 九龍 2020-11-16 01:19:48
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