ふみんふーみん
道草次郎

「太陽の失態」午前1時

のんきな太陽が退屈のあまり海を覗いたそうな
するとパラオの海にぽちゃんとおとなしい波を落としてしまったそうな
だから大西洋はいつも時化なのだそうな


「眠りあさく」午前2時

眠りの浅瀬に
生ぬるい潮水

たおやかな
燃えさしの腕

獏の涕
千の春秋

おかしく転げて
まっぷたつ

酔生夢死
捲土重来
薄翅蜉蝣

なむ
四字熟語

一抹の音符
ハラハラハラ

谷底へ
無の深淵へ

くつがえし
ばーん

ほろほろほろと
くるくるくると
言の葉の紙ヒコーキ
旋回
万来
ららばい

外れた狸でする欠伸
ドロン
ドロン

朝まだき


「天動説な神様」午前3時

きみはぼくの星の知識を
トイレにながしたっけ

奇天烈な惑星軌道
を地でいく人で

木星のまわりに
太陽系があるって信じてた

そんな人ってこの世にいる?
って最初はおもったけど
段々
ああ、いるんだなあと

そして
けっきょくそれは
ものすごい冒険だったよ

時には根負けして
「そうだよ銀河系だって
地球の周りを周ってるよ」
って言ってみたり

きみは
「ふーん」と
ただそれだけ

全くスリル満点だった
ただそこにいるだけで
きみは
大した神様だったよ


「片隅」午前4時

それでもなお
それでもなお
銀河系の辺縁で
かつて殺し殺されたものが
再び殺し殺し合う時
天の歴史はまた一つ
くろがねを増す

トントントン
トントントン
お祖母さんの肩たたき
笑い笑われ
しずかに時は流れ
また一つ
風のコリがほぐされる

ハラハラと
ハラハラハラと
舞う木の葉
冬の足音また一つ
高鳴る鼓動は
きざはしへ駆ける


「なつやみ」午前5時

きおくのかたすみ
すいかのにおい
すだれとひるね
いとこたち
あさのくさいきれ
らじおたいそうだいいち
あふれるきたい
ざしきのこわさ
ちちのおもかげ
もくもくとそらにわく
にゅうどうぐも
その
でっかいきぼう


「温室効果」午前6時

いちどは
純粋に泣いたんだ
生まれた時に

二酸化炭素の充満した毛布の中
三時間かけて
搾り出したのがこれ

そんな眠れない夜に
もう一つの
安定した夜を代入して下さい神様





自由詩 ふみんふーみん Copyright 道草次郎 2020-11-12 09:00:43
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