ローリエ(月桂樹の葉っぱ)
道草次郎

きわまりが結氷である事をもとめて神様は冬を創造したのかな

けれどもローリエを咥えて希望を運んで来たのは何も鳩だけじゃない

あの日のぼくもそっとバーモントカレーにそれをしのばせたんだから

知らないだろうそういう物語を、ノア。
神様みたいに大勢の相手をしてる人は忙しくていつもてんやわんやのはず

紀元前はおおかたは霧のなかだ
キリスト教が世界を席巻してからまだ二度しかミレニアムは到来していないってのにね

世界線を包むベールに凭れて少女は朝焼けまで泣いたよ
だって前世も来世も恋人たちを分断させて戯れてるから

そして
昴の星だけが燦然と夜想をまくしたてている
それはまるでかなしみの全方向へのエクソダス離脱とも

稚児みたいな可愛い中性子をまとった静電気の季節がまたやってくる

星雲もまた一本の塩ビ管だと先生が言って
それに生徒が素直にうなずく凩の吹く頃

ところで夢の断片の縫合が必要だから
きっと夢遊病が流行るんだろうね

でも文明はやっぱり大したものだ
付けっぱなしの電気毛布は戻ったら優しさを人類に与えてくれてる

人生はしょっぱい北の海の海水みたいだね
ぼくはなんだろう毒のない深海のクラゲの子分になりたいかな
そう、子分がいいのさ

ぼくはあの日、ローリエの葉を咥えた鳩で
君に希望の大地をわたしたんだよ、たぶん
まあ
そんな思い出話もあっていいだろ?


自由詩 ローリエ(月桂樹の葉っぱ) Copyright 道草次郎 2020-11-09 22:57:56
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