神降ろしの婆の修祓の儀
板谷みきょう

カミノクニの
アマノガワ近くに住む
神降ろしの婆が

病んでいるボクに

約束して
守らなかったことが
あるはずだ

八百万神に伺いを立て
深く頭を下げた後
おもむろに言った

約束をして
守らなかったこと…

記憶を辿ってみても
思い当たることが無かった

約束して
守らなかったことは
ありません

断言する自信もあって
そう言った

女と結婚の
約束しなかったか

神降ろしの婆が言う

そう言われて
結婚を申し込んで
断られたことを
思い出した

    結婚の約束は
    してないけれども
    もしも
    それを約束と言うのなら
    破ったのは
    ボクじゃなく
    彼女の方だ

悪さしてるのは
イキオモイだ
一応、払っておくけど
生霊だから
払い切れるかどうか

お前を助けてくれると
現れてくれたのは
龍神様だからな

そうして
修祓の儀を終えた

あれから
所帯を持って
数年経った頃

偶然

ボクを振った昔の彼女と
街でばったり会った

彼女は独身だった

…で別れ際に一言

待ってたのに…


自由詩 神降ろしの婆の修祓の儀 Copyright 板谷みきょう 2020-11-08 00:14:43
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