きのこは愛なんか歌わないけれど
そらの珊瑚
この世でいちばん大きな生き物は何だとおもう?
暮れゆくばかりの秋の問いに
ふとたちどまる
たちどまることは忘れがちだけれど
時折とても大切だから
スニーカーの靴底で
きのこをおもう
大地いっぱいに
伸びたきのこの根っこを
それは土に浮かぶふね
タイタニック号幾億隻分の
巨大なふね
アスファルトの下には土があり
そこにだって
触手を
細くはりめぐらせている
陽の目なんか見なくても
この世でいちばん大きな生き物の上を旅する
透明な手を繋いで
でたらめな歌をくちずさみながら
明日閉店する本屋へと