言葉の雨
由比良 倖

寒い、銀河があるだろう?
私はそれに話しかけているんだよ
言葉は空から降ってくる
みんながそれを浴びるといい
私の顔がゆっくりと拡がっていく
薄い、銀河に

みんなが言葉を浴びるといい
言葉は電柱に降り、電線を伝い
ディスプレイを濡らす
私の冷たい指先に
文字が冷たく光っている
冷たい夜の、私の部屋で

この部屋は銀河の岸堤
煙草を吸う私の舌先で
銀河の寒い甘味が揺れる
濡れる、
甘くて、涙を含んでて

視界の外で、空の奧処で
雨を浴びて鉄塔が泣いている
私はそれを感じる
鉄塔に話しかけるんだ
――空から言葉が降ってきて

夜を伝い、銀河を伝い
鉄塔を濡らし、電線を伝い、
iMacを濡らす、壁を揺らす
言葉の、言葉の雨が降る

私はクーラーを切って
眼を開けたままで眠る
常夜灯の明かり、海の底
雨が降り、雨が降り
ディスプレイには虹が掛かる

眼の奥に、寒い、静かな銀河があるだろう?
私はそれに話しかけているんだよ


自由詩 言葉の雨 Copyright 由比良 倖 2020-11-06 03:01:39
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