紅葉がきれいでどうしようもない
道草次郎
夕方のまちの紅葉が
きれいで
きれいで
どうしようもない
思い思いに家路を急ぐ人たち
帰ったらきっと
紅葉の話するんだろうな
日常の
何気ない一コマ
ああ
あんまり良いものは
事実
みんなのものだ
夕飯に
春菊をおひたしをと
茹でたのを細かに刻む
手首の動きにあわせ
ゆたかに
リズミカルに
治ってないだろうな
腱鞘炎
冬の日
どうしても
食べさせたくて
西友で一袋300円近い春菊を買い
それを茹で
鰹ぶしと醤油をかけて
だまって
二人して食べたこと
モミジが
夕焼け空が
あんまりきれいで
人々という人はいないね
ただ人がいて
その人は帰ったら
3DKを泳ぐ魚になったりならなかったり
「おとうさん、紅葉きれいだね」
「うん。きれいだったな」
滂沱の涙は
ふいに
幅よせをしてくる
けれど
世界の愛
その別名をだれもしらない