ホストクラブで働こうと思った時
板谷みきょう

兎に角お金が無かった
手っ取り早く稼ぐのに
趣味と実益を兼ねた商売に
ホストになろうと思い立ち
当時
梅宮辰夫の店で知られていた
「レデースクラブ梅宮」を
面接しようと電話したが
酒は飲めるか
自前のスーツはあるか
社交ダンスが踊れるか
…などで
面接さえ達成できなかった

然らば
…とお店に事情を話して
紹介して貰ったのが
「おぼっちゃまんクラブ」

取り敢えず
カウンターに入ってみてと
言われるままに
カウンターで
お客とお喋りしてたら
酔った状況を見て
アルコール量を減らして
カクテル出してと言われ
バレたらどうしようかと
ドキドキしながら
あれこれと適当にお喋りし
アルコール量の少ない
カクテルを出していた

バレなかったけれども
緊張感が堪らずに辞めた

それから
時給2万円って店に移って
朝まで働いたけれども
指名が入って
初めて賃金支給対象になると言われて
つまりは
ただ働きを朝までしていただけで
その一日で辞めた

そうして
ホストクラブを探してると
開店前に面接をしてくれる店を見付け
早速
面接に出掛けると
随分と小さな店だった
強面の筋骨隆々の店主が
面接してくれた

うちは客と一緒に出掛けることが多い
指名2時間で1万円になる
ホストクラブとして営業してるけれども
客は女じゃなくて男が相手

・・・えっ⁉

「あのぉ~
ボクはそう云った趣味は無いんですけど…」

『あぁ。それで良いんだ。
それじゃなきゃ、お客とネンゴロになって
お金にならないからね。
うちの店で働くモンはみんな
お金の為と割り切って働いてるんだよ。』

断るにも狭い店内に二人きりで
強面の筋骨隆々の店主だから
怖気づいてしまい
断る言葉が見付けられない

そんな時に
突然、店の電話が鳴った

店主が電話を取り
話しだして驚いた

今までとは
打って変わって
見た目とは、大違いの
オネエ言葉なのだ

ボクは男性相手に
体を売るようなことが
出来ないことを告げて
店を後にした

それから濡れ手に粟の
泡銭を求めて
ススキノで働こうとは
思わなくなった


自由詩 ホストクラブで働こうと思った時 Copyright 板谷みきょう 2020-11-05 13:06:56
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