けれども 私には私がいません 不透明な秋のなかで 落とし物のように透過されたから 風は銀河を みだりにはせず 根の調べに いそいそと弾むばかりで 川魚のことや 難読地名すら愛し 秋それは はや足でかけてゆきます 蛍光菌(きのこ)により 与えられた一夜(ひとよ)に 心音のはかなさは響(な)り 耳朶は 玲ろうの宝石になります 杳(よう)として音信 不在伝票の宙がえり 枯葉色した私の夢は 風のゆくえを 花イチジクに たずねることでしょう