愁思と不在
道草次郎

けれども
私には私がいません
不透明な秋のなかで
落とし物のように透過されたから

風は銀河を
みだりにはせず
根の調べに
いそいそと弾むばかりで

川魚のことや
難読地名すら愛し
秋それは
はや足でかけてゆきます

蛍光きのこにより
与えられた一夜ひとよ
心音のはかなさは
耳朶は
玲ろうの宝石になります

ようとして音信
不在伝票の宙がえり

枯葉色した私の夢は
風のゆくえを
花イチジクに
たずねることでしょう


自由詩 愁思と不在 Copyright 道草次郎 2020-11-03 22:03:34
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幻想の詩群