卵焼きの思い出
道草次郎
毎日ではなかったが
うまい卵焼きをつくって弁当にいれてくれた
君のできる最大限のことをしてくれていて
ぼくもそれは同じだった
お互いずるさはあったけど
ぶつかるとどうしても引けなかった
ぼくはそれまで
自分が日本で一番なんでも譲れる甘ちゃんだと思ってたのに
今じゃ日本で一番なんにも譲れない甘ちゃんだったと思っている
いや日本で一番じゃなくて
住んでる小さな町で一番ぐらいだよ
訂正する
ぼくは自分の性分に縋り
君は君の過去に縋って
そのどちらも同じようなものなのに
いざ話し合うと
それは別々のものだという話を二人でこしらえた
これはたんに愚かなのか
人間てそういうものなのか
そもそもそれは考えるに値しなさそうだけど
とにかくさ
ぼくは君を理解しようなんて一度だって思わなかった
君が何を言っても
ぼくはそれなりにショックを受けはしたものの
君の存在だけを感じようとした
そういうとてもとても傲慢な男だ
今言えるのはこれぐらい
だって
詩ではなんにもならないんだから
ぼくは詩でないところでがんばります
でも詩を書いていて
いいことはひとつある
それは
自分がどれだけバカなのかが
詩を書かないときよりもほんの少しだけわかるような気がするんだ
だから書くんだよ
そういうことの必要な人間がいることを
死ぬまでには君に知って欲しいななんて思いながら