ファム・ファタール
秋也

血の匂いと白薔薇落つ
夕闇に佇み
微笑み
盗まざる負えず
盗まざるに
やがて沈む陽光弱く
赤くそれでも眩しきに

目の前の小さな地割れ
蟻のようだから
這い出て藻掻きやはり落ちる

君に抱きつきたい
君に撫でられたい
君に殺されたい
何度も何度も
月が毎日欠けて消えたままだ

君の肩に顎を乗せると髪が柔らかいんだ
何もかもがどうでもよくなり
嘘の優しさに弛緩する

今日をどうされたい
いつまでもいつまでもこのままを
ずっとずっと産まれる前から

落ちた白薔薇が土と生臭い血に塗れる
「薔薇は何も返さずに誇って咲き、ただ美である」
やっぱり綺麗だなあの人
全てを受け入れ全てを拒絶され
ただ喰われる

いざ倒れる時、蜘蛛の糸に寄り掛かったが駄目だった
君が遠のくハイヒールの音だけが心地よい
すっかり暗く
やっと君に熔けれた







自由詩 ファム・ファタール Copyright 秋也 2020-10-24 22:08:26
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