淋しさ
ベンジャミン

孤独は受け皿ですから
こぼれた何かを受け止めるのにひっしです
こんな自分でも
在る
ということに満たされている
ひとりぼっちの
ぼっちという響きが好きなように
社会の残酷さを嘆くとき
現実の過酷さに浸るとき
朽ちた感情は蓄積します
残念、無念
こんなにもたくさん
抱えきれないという幸せ
いつ死んでもかまわないと
言う人を知っています
その言葉の意味が分かります
酒を飲んで
気化したアルコールを吐く
味わった苦しみでさえ
酒のつまみでしかありません
消えてしまいそうな
危うさを漂わせるのは邪悪でしょうが
肩を寄せ合ったとき
伝わってゆく自分の分身を
眺めるのは好きです
気化したアルコールの息を
吸いこんだとき
淋しいと
呟いてしまうのは言い訳で
張り合わせた過去と今の
隙間を見ないように
視線を落とす
淋しさは
飲み干したグラスにはありません
割り勘の計算にもありません
淋しいとつないだ手にも
一緒の影に収まって歩く道にも
始発を待って
買った切符の裏側を見たり
時刻表と時計を見比べたり
順序よい儀式の最中に
少しの沈黙が嬉しかった
どんな人生だったとか
これから先がどうだとか
そんなおみやげを持って
別々の方向へ歩き出す
淋しいと
呟いたことを思い出して
打ち消しながら
空席の先
くり抜かれた景色が
線のようにたなびくとき
一つ思い出せない
誰かのセリフ
たくさんをかかえて
自分に満たされていたはずの孤独も
失せてしまった
ため息
抜けてきた酒の
薄くなったアルコールの息に
少しずつ
正気を取り戻しそうな
感覚の中に

見つけてしまう

   


自由詩 淋しさ Copyright ベンジャミン 2005-04-17 08:27:23
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