ズボン
六九郎

ぼくのお母さんははたらきものです
朝早くから夜おそくまではたらきます
お父さんはいません

お母さんの仕事はズボンに穴を開けることです
毎日たくさんのズボンに穴を開けるそうです
そのせいでお母さんの指は黒くかたくなりました

「どうしてせっかく作った新しいズボンに穴を開けるの?」って聞いたら
「そのほうがよくうれるらしい」とお母さんは言いました

ぼくのズボンにも穴が開いていますが
これは前の子のせいです
どこのだれかは知りません
お母さんが町の古ぎ屋さんで買ってくれました

ぼくがズボンの穴に指を入れるとお母さんはおこります
「穴がおっきくなるよ」って

いつか大きくなったらぼくはにっぽんに行きたいです
はたらいてお母さんにお金をおくります
そしてお母さんが作ったズボンをはいた人に聞いてみたいです
「どうしてズボンに穴を開けるの?」って


自由詩 ズボン Copyright 六九郎 2020-10-22 13:50:38
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