鳥へ
道草次郎
この棺桶はきゅうくつで
けれども
そらは紺碧透明
(小鳥のに、さんを棄てている)
こんじきの比喩や
空明のかぜの詩
それを〔私〕はみたけれど
(もちろんそれはそれでとてもただしく 美しく
本然じざいの脈動にも 裏打ちされてもいたけれど)
日がな一日ますくの中で
じべたの蛇と懇意な詞書をつぶやくのみで
(俺は自分を どうにもできず
この体躯という小さな匣
で くらし)
いつしか
あからさまな巨きな黑い瞳だけの
そんざいとなり
しろい鴉がごうかに灼かれる砂漠へと
ひとり歩くのだ
(彷徨うしかない うんめいを 背負った
肩は 黄昏)
かれた仙人掌を置きざりに
こんとらすとな息を吐く〔私〕は
明滅をして
はっこうをして
からまりながら
小石をなぶる原罪か
見よ
かなたには
炎咲くこうやを渡る鳥いちわ
(ああ あれは
おれだ おれはおれの中の空を
一羽のとりとなり とんでゆくのだ)