ナンのスタンス
ブルース瀬戸内

ナンと呼ばれようがナーンと呼ばれようが
皆さんは私のことを勘違いしているようだ

私の姿がお面のようで雲のようなものだと
それが定形で適切で妥当ではなかろうかと
勝手に思い込んでいるが待ってくれないか
これが私の本来の姿だと思ってほしくない

偽善に満ちた天使の姿ではないだろうけど
浪花節満載の悪魔の姿ではないだろうけど
そうした姿をも彷彿とさせる究極の無定形
それこそが私であることを伝えておきたい
その意味で私は光沢の仮面をかぶっている

このツヤとテリは悲喜こもごもの涙であり
この味わいは清濁分けぬ慈悲の結晶であり
この色は嬉々と世界に染まらぬ覚悟である
それこそが私であることを伝えておきたい

何者であれど生涯があるように私にもある
だが何者であるかは私が決めさせてもらう

勝負ごとも白黒つけることも大嫌いである
だが敗北主義は更に嫌いで負けたくはない
屈折しているし偏見に満ちているのが私だ
屈折していないなら屈折せよと思うほどだ
偏って見ないのは何も見てないのと同じだ

なんと粗雑で無定見で無狭量なスタンスか
だがそれが私そのものであるし一言言えば
好きにちぎってカレーに私を浸してほしい
誰が何を言おうと私は既にあなたのものだ


自由詩 ナンのスタンス Copyright ブルース瀬戸内 2020-10-17 10:50:24
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