問答
もちはる

山寺の宵
庭と向き合い
和尚とふたり並んで
座禅を組む

拍子木が鳴る
鎮まり返った境内
前方の山が霞んでいき
ひっそりと夜の帳が下りる

庭風がなで
蚊が飛んでくる
一匹目 足に 許す
二匹目 頬に 息で追い払う
三匹目 左腕に パン!
隣からは何の音もしない

瞬く星を見ながら
和尚が口を切る
「生まれた時の様子を
 一文字で言うならば?」
すぐに答えられない私に
「次回までの宿題にしよう」と

ハンドルを握る帰路
一文字をさがす
源 素 無 空 …
元へ帰りなさい なのか
自分で作った拘りを捨てて
あるがままに生きなさい なのか
夜道に見えかけれするものを
つかもうと追いかける




自由詩 問答 Copyright もちはる 2020-10-12 11:11:53
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