長い夢
塔野夏子
長い夢を見ていたようだ
白い陽が
ハイウェイの彼方へ落ちてゆく
言葉がひとつ ふたつ
淡く発されては消えてゆく
別離の色彩が
こんなにも静かでやさしいことに
少しとまどいながら
長い夢を見ていたのかもしれない
君のいくつかの無造作な覚醒
無邪気な忘却
透明なフィルムになり胸を流れる
ひとつ ふたつ
互いに淡く発する言葉は
まるで遠くから聞こえてくるようだ
別離の色彩は
ただやわらかくにじんでゆく
ああそういえば
景色のどこかに いつも桟橋が見えていた日々だった
長い夢であったならよかった のだろうか
白い陽が
巨きく虚ろな秋の彼方へと
ゆっくりと落ちてゆく