雨降りの記憶
ひだかたけし

濡れたアスファルト、
黒光りしながら
ゆらゆら揺れ
今日は雨、
胸奥が
酷く切なく軋み
遠い記憶の余韻が響きます

 *

あれは小学二年のこと
休み時間の騎馬戦で
後頭部を切り出血し
保健室で応急処置
頭にぐるぐる包帯巻かれ
雨降る灰色の渡り廊下で
保健の先生が来るのを待っていた
病院に連れて行くからと言ったまま
一向に現れない先生を
長らくぽつんと待っていた

(雨降るなかを雨降るなかを)

その時わたしは理解した
じぶんはどうしようもなく独りなのだと
じぶんはたった一人のこの自分なのだと
雨降り灰色に煙る校庭を
見つめながら理解した

 *

濡れたアスファルト、
黒光りしながら
ゆらゆら揺れ
今日は雨、
胸奥が
酷く懐かしく疼き
遠い記憶の余韻が響きます
(記憶の堆積を貫くもの)










自由詩 雨降りの記憶 Copyright ひだかたけし 2020-10-10 15:36:51
notebook Home 戻る