虚無感
道草次郎

自分の根っこを見つめる
すべての人間への憎悪なのか
すべての人間への深い愛なのか
それらはとても似ている
そういう考えは空想家のすること
憎み愛するのが人間だ
現実家は迷いながら仕方なく生きている
仕方ないながらそこに味わいを見て

青い車と赤い車から
それぞれ女が1人ずつ降りて颯爽と事務所へ歩いていく
女であるというのはどんなものだろう
男と何がおんなじで何が違うのだろう
女の憂うつはすこし男のと違う気がする
女には男のような弱さがないような気がする
これはたぶんただの間違いだろう
どうか許してください女のみなさん
良い詩を書くのが大半は女であるのは何故だろう
よく分からない

自分の根っこなどどうでもよい
さっき考えたことが今はどうでもよい
憎悪も愛もどうでもよい
空想家も現実家もどうでもよい
工事の音だけがする
そして自分はいささか病的かもしれぬ
じつはそれもどうでもよい
ただ工事の音がしている
それだけだ
空は曇り
ここはあの世かそれともこの世か
そんなこともどうでもよい
ただ
工事が行われているっていうことが
この世界の条件をたんたんと規定しているのみだ
そういうことも
まあどうでもよい
この詩だけはどうでも良くない
と言いたい自分などは
つくづく
本当に
どうでもよろしいのだ


自由詩 虚無感 Copyright 道草次郎 2020-10-09 08:54:33
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