文身
あらい

文賭(あやと)する
 白銀の途に足跡が落ちています
 さまざまな思いが奔る ばかりの残響が
 駆け巡るのを眺めましては、
文遠(ぶんとお)く
 しげしげと認める 夕餉の彩を
 お伝え出来ないのが 実に無念であります。
文標(ふみしる)す
 口を塞がれた山鼠の道筋は確かに
 あちらこちらに灯火を遺してゆくもので
 さて、あるべき場所は
 どこへなりとて息吹周りて軌跡と伝染り込むもの。

やむことのない あめかぜにただ、ただうたえよ
風花よ、舞い 賜えよ

 否定も肯定もいらないから
 抱きとめて欲しいだけ
 コトバなんか決して入れないで
 私、泣いて終うから
 心底怖くなるわ

 白紙の鳩が平和を呼び込むなら
 私、紙飛行機で飛び立って見せるの

ゆらゆらと蝋燭の明かりにうつりこむ
鉄漿蜻蛉(おはぐろとんぼ)が
脱色された烏とそのうち影と躍ります

あなたのその手で咲かせた心の像は
いつまでも花開くことなく蕾のまま
色づくこともなく、
ただ墨色の日々を認めている




文身《ぶんしん》(入れ墨・刺青)
あとから筆を加えること。加筆。入れ筆。


自由詩 文身 Copyright あらい 2020-10-07 00:49:29
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