覆水
むぎのようこ



くだけちる
まえの、ひかりを
だまって
みつめていた


夏のおわりに
めばえをなづけたりする
そらは逃げ水になって
星をのみほす
みたこともないくらいに
あかい月を
孕んで
やわらかな肉がながれていく
河を
せきとめる石の
軋みが
だんだんとおおきくなる


糺すことで
かえることが
できる、と
おもっていた
しろい手を
ほどきつづけて
ここに立っている
日に焼けた頚筋から
あまく
かおらせて
そらたかく水面に
ひびわれたから
像を、むすばない
ひかりが
降ってくる











自由詩 覆水 Copyright むぎのようこ 2020-10-01 22:44:11
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