リバイバル 抄
直治

散った花のうすい日陰をゆく
迎えを待つ小さな雨にふられる
生きるつめたさを布団抱くよ
胎児のようにうずくまり朝の見たくない光
朝のつめたい便所をいったりきたり
帰りたい日々が朝のシーツくるまっている
暖色の明かりにわびしい朝の洗顔する
朝のシンクに劣等感がばらけている
夏の肌着で我が身くさぐさとする
夕陽にばかみたいな買い物袋さげて来た
朝のシーツにはだけて我が身でっぷりとある
がたびし工事の音がして薄曇り
ぽろりんピアノ弾いているつたない秋です
また薄暗い部屋にもどって来た
座敷牢のような部屋の灯りをつける
この身がいちばんの荷物として秋の風吹く
蝶が舞うしずかな水音さす
郵便屋が去ったあとの朝の光
どこ行く宛もなく煙草の火が私の所在
さみしい家に帰りゆくだけ長い橋わたる
せまくるしい街のぬるい風に追い越される
どこにも翔べぬ白々と秋空
しずけさに胸つまらせており白日
はっきりと影としてあり侘しさ
さみしい宿をあとにして帰途につく秋の風だ


俳句 リバイバル 抄 Copyright 直治 2020-09-30 21:58:30
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