少年の一日
◇レキ

誰もいなくなったようなので
過去を忘れたようなので
身の丈を知ったようなので

少年は心が軽くなりました

少年の目は脆すぎる安心の中そっと開きます
当然にある日常、という名の奇跡
すなわち朝ごはんを食べます

それから出かけて
汗水だらだらたらして
代わりにお金を頂きます

帰ってきたら
一歩間違えば壊れてしまう
心の安寧に水をやります

沢山の囁きが少年を包みます
それは苦しみの中にいた頃の残骸です
今はただぼんやりとそれをききます

少年は寝る前に願います
明日も
誰にも会いませんように
過去を掘り起こされませんように
安心が壊れませんようにと


夢の中で思います

散々な過去をも受け入れてくれる
誰かが訪れてくることを
こんな自分を受け入れながら
誰かを訪れる自分を


自由詩 少年の一日 Copyright ◇レキ 2020-09-29 21:58:33
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