初めての夜に
こたきひろし

選ばれる事に挑戦するのは苦手
ずっと子供の頃から何にも選ばれなかったから

のど自慢にたとえるならいっつも鐘一つしか貰えない人
鐘一つと鐘二つの計り知れない差異の大きさを悩みになやんでいた青春

だけどさ
大人になるにつれて発想の転換を試みたんだ
鐘一つの意味する所

けして零点じゃないんだって
もし零点だったら一つだって鳴らさなければいい訳だからさ

そう思う反面
否定してしまう自分もあらわれた

鐘一つはどこまでも零点に近い評価に違いないんだって

だけど結論は迷路に入り込んで出口はいつも見つからなくなってしまうんだ

それは暗黒の夜だった
私は6号国道をクルマで走っていた 買って間もない安物の中古車だったから運転には慣れていなかった
それよりも何よりも免許取って半年もたっていないハンドル操作は自分自身が不安に煽られるものだった

勿論 それは助手席に座っている女にもひしひしと伝わっている筈だった
終始落ち着かない様子だった
 ネェ何処か休めるところでゆっくり休憩していかない?
甘えているような甘えていないような切羽詰まっているような声音で言ってきた
そしておまけを付けるみたいに続けた
 二人だけになれる所でかまわないからさ
運転する事に必死になっていた私でもその言葉は聞き逃さなかった
だから確認の意味を込めて聞き返した
 まだ知り合って3ヶ月目だけれどいいのかな?
すると女は答えた
 もう3ヶ月なんだものいいわよ
その返答は意外だったけれど、女が一応鐘を連打してくれたのは確かだと思った
合格点を貰えたよろこびの反面、簡単に鐘を鳴らす女なのかもしれないという不安が私をかすめた
のは事実だった
しかし
何は兎も角休息したい気持ちと俄にわき上がる性の衝動に見事に打ち消された

とはいうものの財布の中身と相談せざる得ない私は出来うる限り安いモーテルを選ぶため6号を走り続けた
何だか交尾を急ごうとする発情期の犬みたいに自分がなっていた


自由詩 初めての夜に Copyright こたきひろし 2020-09-27 01:10:23
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