夜の通過待ち
七
秋の虫たち るうるう
無残に刈られた草むらの
最果てみたいな端っこで
透明になる身体
開いた扉の
まっくらやみの先を
眼をつむったわたしは見ている
姿なき虫たち
愛でも希望でもなく
破滅を刻んだ翅を立てて
寒くもないのに震えるのは
あのひとが置いていったサンダルから
陽炎のように立ちあがる心残りを
冷やさないといけないから
お腹が空いたね
この電車
闇を照らすには足りない灯火
夜の通過待ちに
考えなければならないことがたくさんありすぎて
ようやくすべきことが見えたかのように
ひとりだけ
スマホの電源を切る