雨の塔
タオル


昼間だけど電気をつけないといけない昏さで
どうということはないけど
しみじみと低いこころをつくえのうえにうかべている

あたまの向こうには
昔からずっと同じ時計があって
何時かわかるということは
針が回っているということだ

朝に食べたパンの屑を拭き取って
まだおなかがずっしりと重い

子どものとき、
太陽の塔を見て
雨の塔もあるかと親にたずねた
『雨が降ったら太陽の塔は雨の塔になるんや』
と親はでたらめを言った


針の音は聴こえないが時間は経っている


やがてカレンダー数十本ごとの大量の時間が過ぎ去ったとき
もしも捌ききれなかった自分が老後を歩いているならば
ふらふらでも抱えているのは
今日のような日の堆積が静かに煮凝ったもの、なんだろうか







あたまのなかに
ピンとした太陽の塔が置かれる
とても小さく
とても小さく



世界が一瞬静まり返る




……雨音が
歌声のように響き始めた













自由詩 雨の塔 Copyright タオル 2020-09-22 21:55:51
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