石積み考 他
道草次郎

「石積み考」


むつかしいことは知らないが
例えば
ばかやろう

ありがとう
を分離して使用するから落第なんだろう
尤も事はそう単純じゃないだろうが
とにかく
ぼくは面倒なのはイヤだから
いっそ
まぶしてお供えしてはどうかと思う
文字通り
ばかがとう
若しくは
ありやろう
後者は博愛主義に反するとして
ばかがとうを妥当とする
「この、ばかがとうめ!」
あ、いやこりゃ迂闊
そも通じない
これはあれだ
よくテレビのバラエティー番組で面白司会者とかが、その一場でのみ成立中の笑いの特殊状況(?)にツッコミをいれるあの感じに似ている「今テレビつけた人、意味わからんで!」

成程得心した
やはりあんまりまっしぐらもいけない
何事も勉強だ
つまりやっとはじまりの先っぽにふれた風情
そんな気になる
何事もその気になることだ
虚仮の一念岩をも通すだ
うん
その気になったらそこらの石でひとつ小ぶりなピラミッドでも拵えるとするか
尤も
スフィンクスにまわす分は諦める



「ハビタブルゾーン考」

水星にとっての太陽は片頬を張る虐待者に違いなく
金星にとっての太陽は鬱屈とした暴君
地球にとっての太陽は知っての通り信仰の対象ですらあり
火星にとっての太陽は有難いけど物足りない友達で
木星にとっての太陽は故郷に居る頑固おやじみたいなもの
土星にとっての太陽は輪っかをくれたけれどもどこか遠い存在
天王星にとっての太陽は余りにか細いつながりのどこぞの親類ならば
海王星にとっての太陽はもはや永遠のネグレクター



「ふかふかの布団考」

それだけでもうふかふかの布団は心地よいです
落ち着いていて
それは眠るためのものとして使われます
朝の光がすこしだけカーテンの隙間から入り込んできても心は全く乱されることはありません
この暖かな布団さえあれば他に何も要らないとすら思われます
理想のふかふかの布団です
ふかふかなまま
ふかふかの文章のまま
たとえこの文章がそのふかふかさを表していないとしてもこのふかふかは実在します
このふかふかほどに文章の枠ぐみはふかふかでないということにしておきましょう
その方が布団も十分ふかふかとなれましょう
自分も布団とともにふかふかを
この世界の背中にしばらくもたせていたいとそう願います




自由詩 石積み考 他 Copyright 道草次郎 2020-09-21 13:35:29
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