夢のものがたり
こたきひろし

穢れなき少女はとこしえに汚れなきままにいて欲しい
と切に願った
初恋の人ゆえに

木造のふるい校舎はぼんやりとした記憶の中に佇んでいた
雨が降る度に廊下の天井から水が垂れてきた
修理はされないままに、雨の日は廊下の至る所にバケツが置かれた

バケツが楽器になって音楽を奏でる
何だかそれが心地よくて
授業と授業の合間の短い時間に廊下に出て
廊下にぼんやりと立って聞くともなしに聴いていた

クラスメイトのおんなの子が一人
廊下に立って壁に寄りかかっていた
その時おんなの子は
誰にも見られたくない秘密を抱えてしまい それを必死に隠そうとしていた
困惑した表情は今にも泣きそうになっていた

男の子はその異変に気づいた
履いていた可愛らしいスカートから鮮血が垂れていたから
おんなの子はその状況に気づいているのかいないのか
自分を襲った体の異変にどうしていいかわからない様子だった

男の子は何も聞けなかった
なぜなら
何となくその血液がおんなの子の股間から出ていると敏感に感じたからだ

その内に女の先生が教室に向かって廊下を歩いてきた
先生は側まで近づいて来ておんなの子を見て直ぐに気づいた

慌てて教室に入ると他の生徒たちに自由学習を言い渡した
そして廊下にいた男の子にも教室に戻りなさいと言って同時に口止めの合図をした

それから先生はおんなの子を保健室の方に連れて行った

血で汚れてしまったおんなの子を急いで何処かに隠すみたいに


自由詩 夢のものがたり Copyright こたきひろし 2020-09-19 07:47:43
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