フラグメンツ カタログNo.211~240
AB(なかほど)



211
おはようって
誰かが誰かを愛する事と同じように
金色の穂が夕陽に輝くように


212
裏の用水で彼岸花を見たよ
と言っても
きっとそれどころじゃない


213
そんで
いろんなことを越えて来たんだ



214
手をつなごう
小さい頃の君に会うため
手をつなごう


215
オオバコやタンポポしか数えるものもないのに
ひとこぎ進む度に
君を通り過ぎた気がした


216
静かに消えた夜
いくら側にいても
静かに凍えた夜


217
何もかも捨てたつもりでも
夕陽は
別腹らしい


218
何もかも捨てたつもりでも
気づけばいつのまにか鼻をすすっている僕も
よっぽどなんだ


219
おかえりと言った
いつか君の町で
君のうたで


220
止まってしまうもんなんだんね
足をひっぱるつもりは
なかったんだよ


221
いつまでも
何もないという思い出だけが
残った


222
ぽぅ 

うちの口からも祈りの声がもれた


223
終わりになりませんように
最後のひとかけらは
合いませんように


224
また明日
もしも君さえよければ
一緒に答えを探しに行こう


225
ふと
あの夜とは違う君が
ほっぺを膨らませている


226
書類の山の向こうに
僕らの公式が待ってる
のかな


227
君の街は晴れてるかい
君の国は晴れてるのかい
君の空も晴れているのかい


228
つかのまに慣れてしまう
なんて
できないようだ


229
窓はない
最初からなかった
そう思ってごらん


230
君の手は優しくなれると思う
差し伸べられる全ての方向へ
やさしく


231
今日
降って 消えた
ことばは とんと


232
そんなふうにしながらも、またひとつ消え
そうな。昇るだけの梯子の上で、君の方が
先に夕陽になって消えた。


233
i 何も知らない僕から
君へ
しごく当然の景色を前にして i


234
忘れられないということも
全て
仄明な化石になってゆく


235
つまりこんにちはかばいばいだ
桜咲くな
まだ散るな


236
もう会えない君へ、
山 白く 輝いて 
まぶしいよ。


237
忘れそびれた 五時
眺めそびれた 空は
五時そびれた 五時


238
唇は乾いている
それは四月六日
信号は点滅している


239
君のように
静かに笑えたらいい
ありがとうって


240
指先の全ての方向から
草木の匂いがして
やがてそれぞれの車線に流れていった









自由詩 フラグメンツ カタログNo.211~240 Copyright AB(なかほど) 2020-09-18 17:46:43
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