出入橋きんつば
385

稲荷神社の境内は
屋台の喧噪が過ぎ去り
散り桜がふりつもる
静かな春の時間に
鳥さえずり子ども笑い

週末のドライブで
いつもあなたがかけた曲
あのカセットはすり切れて
CDに買い換えてしまったけれど
まだ捨てずに持っています

あなたのいないこの世界を
生きることも去ることも
少しも怖くはない
いつもそばにいて
ちゃんと話ができる

習い始めたばかりの笛では
島唄は風に乗らず
方々に迷い惑って
躊躇いがちに舞い踊り
当て所なく砕けて

今日は出入橋へ寄り道します
ふたりの最初と
最期の味は
さっぱりと甘く
いまもなお


自由詩 出入橋きんつば Copyright 385 2005-04-15 23:24:23
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