詩三篇
道草次郎

「LI○E」

宇宙一
鈍感ゆえ
死をかきかき

詩を書き書き
の間違え
変換機能にも
ボディーを喰らう
哀しみよ

これじゃまるで
何かの
やりとり
緑のアプリのやつ
最近
ちょっと
世間をしった
自分


「微睡み」

朝方刈った青空の匂いが
スイカの匂いだった

てんとう虫のぼくの棺桶は
中学校の教室で

稜線をしまいこんだ海
秘匿されたのは大陸棚だった

こうしていることは
いつでも軽くこうしていないことの裏返しだね

さよならしながらも
太陽系ごと動いているのです
だから
みんなさよなら
その中に
小さなさよならがいっぱい
宝石のようだね
人は

午後は午前の思い遣り
冬は夏の親切として
それとも
この世はあの世から飛んできた紙飛行機かな
拾って展いてみれば
神様の
詫び状なんかがあって

いえど
世界はうつくしく

これが
あなたの皮肉ですか

船を漕ぎ漕ぎ
もう
昼下がりです


「預言者」

ぼくが今から書く詩は
たぶん自分を憐れむ気持ちから起こったものだから
うち捨ててもらって構わない

なにもかも
そんな風じゃなかった本当は
色んなことが
例えば
長いものはそれよりは短かったし
短いものは少し長かった
怒りの温度はじつはそんなに高くもなく
争いの時は存外に静かだった
悲哀も同じ
たんたんとした中にそれは体育座りをしていた
夜はいつだって明けたし
朝はそれなりだった

でも
何かだけが
何か一筋の細い糸のようなものだけはそこには張られていた
と思う
それだけは
これから書こうとする詩とかなり近似値だろうと
そう思う
自信はあまりないけれど

つまらないね
やめようか
けどね
これもぼくだな
ここでやめようが思い直してまた書こうが
こういうのに
ひとりで決着をつけた人間の物語をぼくは今
図書館に探しに来ている
だから
相も変わらずだ

思い出す
むかし君のために借りたかぎ針編みの本や
たくさんの絵本
それから
あの日
君の見えない所で後ろ手に捨てた
カリル・ジブラーン








自由詩 詩三篇 Copyright 道草次郎 2020-09-15 17:51:18
notebook Home