9月の夕暮れ
福ちゃん

大人がやけに黙っているから
後ろに乗るよう言われても
僕は少し躊躇っていた
それでも素直に従ったのは
静かに母が僕の背中を押したから

ドアがバタンと閉まる
車体が震えてタイヤは前進を始める
僕はいつものように振り返り
手を振る母を確認する

母は今日も手を振っていた
やはり黙って
いつもよりもゆっくりと
手を振っていた

間違えてしまったね
9月の夕暮れ
ひんやりとした風が入り込んでくる
顔の無い運転手が僕を遠くに連れて行く


自由詩 9月の夕暮れ Copyright 福ちゃん 2020-09-14 20:25:08
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